北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けて開催された5日の国連安全保障理事会の緊急会合で、ヘイリー米国連大使は国連決議に違反して北朝鮮と交易関係を続ける国への制裁措置として米国が禁輸も辞さないと述べた。北朝鮮の友好国である中国に対しては金正恩(キム・ジョンウン)政権への制裁強化が不十分だとして、圧力を強めるよう要求した。ただ中国は制裁強化に反対しており、米国は中国との協調方針を転換するかどうかぎりぎりの判断を迫られている。
勢いづく強硬派
ティラーソン米国務長官は4日、北朝鮮のICBM発射で米国とその同盟国への「脅威が新たに高まった」との見方を示した。トランプ大統領は5日にツイッターで「中朝貿易は1〜3月期に4割近く伸びた。中国はわれわれと連携すると言うからやらせてみたが、こんなものか!」と不満を表明した。
米国は中国の力を借りて北朝鮮に核・ICBM開発を抑制する戦略の限界に直面している。
最近の北朝鮮の行動でトランプ政権内の強硬派は勢いづいている。米政府は中国側の反発を招きかねない態度表明を検討中だが、経済への影響や実情に照らせば、選択肢は限られる。米国の利益を損なわない形で、中国に北朝鮮への影響力行使を促す対策が求められている。
これまでのところ、トランプ氏は慎重を期したやり方を進めている。米国務省幹部によるとトランプ政権は中国に対し、為替や貿易など経済問題で圧力をかける計画だ。また米国は他の同盟国に対し、北朝鮮を外交的に孤立させるよう求めている。
米ハーバード大ベルファー科学・国際関係研究所調査部門のエグゼクティブ・ディレクターで、オバマ政権の大統領補佐官(核不拡散担当)を務めたゲーリー・サモア氏は「中国は、北朝鮮に実際に圧力をかければ金委員長が決死の行動に出て、争いや戦争を引き起こしかねない上、北朝鮮が崩壊して混乱になり、北朝鮮が韓国に吸収され、難民が国境を越えて逃亡してくることを懸念している」との見方を示した。
トランプ氏が中国への直接圧力を強めたくない場合、中国の銀行に対する制裁を強化する可能性がある。米財務省は先月、中国の丹東銀行などを対北朝鮮の二次的制裁対象に指定した。
だが中国は自国の銀行に深刻な影響を及ぼす措置に対して強く反応する可能性が大きい。中国の国営メディアは習近平国家主席が丹東銀行への制裁措置を受け、「否定的な要因」が米中関係を損ねているとトランプ氏に伝えた。
為替操作国に認定も
トランプ氏は財務省の為替報告書発表後の4月16日にツイッターで「北朝鮮問題でわれわれと協力している中国を為替操作国とどうして呼べようか」とコメントしたが、中国を為替操作国に認定する可能性もある。
トランプ氏は中国を刺激するために、米鉄鋼業界保護という選挙公約を用いる可能性がある。鉄鋼輸入が米経済に及ぼす影響の見直しを命じており、最近は明らかに中国を意識したとみられる鉄鋼のダンピング(不当廉売)の慣行への批判を公然と繰り返している。
ただそうした行動は米国自らに跳ね返る。米国内の鉄鋼価格が上昇し、米国製品に報復関税が課されるリスクもある。
米国は北朝鮮の挑発行動に対抗して太平洋での軍事演習を実施し、軍事的存在感を高めているが、そうした行動は中国の反感を招きかねない。
米国の圧力に対し中国は4日、ロシアと連携して「米韓が大規模な軍事演習を中止するならば北朝鮮に核・ミサイル開発の停止を求める」と提案した。(ブルームバーグ Nick Wadhams、Justin Sink)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/170707/mcb1707070500015-n1.htm
2017.7.7 06:00