1/13(金) 17:00 夕刊フジ
https://news.yahoo.co.jp/articles/022f5ff6967b65d9649b33a5e6997abbaead741f
習近平国家主席率いる中国が、対日姿勢を硬化させている。中国渡航に必要なビザ(査証)だけでなく、第三国への乗り継ぎ時に中国に一時入国できる臨時ビザの発給手続きまで停止にしたのだ。新型コロナウイルス感染が急拡大する中国に対し、日本が水際対策を強化したことへの対抗措置と報じられるが、それだけなのか。中国事情に精通するキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司氏は、岸田文雄政権が昨年12月、「台湾有事」も見据えて「安保関連3文書」を改定したこととの関係に注目する。こうしたなか、岸田首相は13日(日本時間14日未明)、米ワシントンでジョー・バイデン大統領と首脳会談を行う。
【地図でみる】沖縄周辺の主な陸自配備部隊
「日本国民に対する中国一般ビザの発行を一時停止します」
10日夜、在日本中国大使館はホームページで短い通知を掲載した。翌11日、中国外務省の汪文斌報道官は会見で、「関係する国が中国に対し、差別的な措置をとった状況に基づいて対等に反応した」と理由を説明。中国での新型コロナウイルス感染拡大を受けて、日本政府が中国からの入国者に対する検疫を強化したことに対する報復措置であることを指摘した。
だが、この中国側の措置には疑問を呈さざるを得ない。
中国政府が昨年末に突如、「ゼロコロナ政策」を事実上撤回したことで感染が急増しており、北京ではすでに市民の感染率が80%に達したとの専門家の分析があることは前回の拙稿で紹介した通りだ。さらに、中国政府が感染状況をしっかりと開示していないことが、国際社会の不安を招いている。
世界保健機関(WHO)は4日、中国が公表している新型コロナの感染状況について、実態が「過少報告されている」と指摘。欧州諸国をはじめ各国も相次いで、中国からの渡航者の水際対策の強化に乗り出している。
にもかかわらず、今回の中国政府によるビザ発行停止の措置は、日本と韓国だけだ。観光や出張などの15日以内の訪中のビザ免除措置もすでに停止されている。11日には、中国を経由して他国に向かう際に免除していた「トランジットビザ」についても一時停止を発表した。日本人の中国訪問を事実上封じる厳しい措置となる。
北京の日本大使館がツイッターの公式アカウントで、「日本は中国人の訪日ビザの発給を制限しておらず、中国側のやり方には完全に対等性に欠けている」と反論している。日本政府も中国人の来日ビザの制限を含めた報復措置を早急に検討すべきだろう。
こうした中国側の厳しい措置の背景には、「習近平指導部の対日外交の変化がある」と筆者はみている。
伏線はあった。
昨年12月末に予定されていた林芳正外相の訪中が突如、キャンセルとなった。日本政府関係者によると、「新型コロナの状況などを鑑み、年内の実施は難しくなった」と中国側から申し出があったという。
だが、「コロナを理由」としたキャンセルは口実に過ぎないだろう。
12月21日には、オーストラリアのペニー・ウォン外相が4年ぶりに訪中している。今年に入って1月4日には、フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領が就任後初めて中国を訪れているからだ。
では、中国側が対日強硬に傾いている真の理由は何か。
複数の中国政府関係者は「日本政府の台湾政策への不満」を挙げる。岸田政権は昨年12月16日、中国によるミサイル攻撃を想定した敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有などを盛り込んだ国家安全保障戦略など「安保関連3文書」を閣議決定した。同26日からは、自民党の世耕弘成参院幹事長らが台湾を訪れてもいる。
今後、台湾情勢が緊迫してくるに従って、中国政府による日本側への揺さぶりは強まるだろう。その都度、日本政府が右往左往してはならない。
「台湾有事」において日本にとっての譲れないラインは? 有事の際どのような役割を果たすのか? 日本の防衛にとって何が足りないのか? 自らの戦略を固めて対中抑止を高めていくことが今、日本に求められている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/022f5ff6967b65d9649b33a5e6997abbaead741f
習近平国家主席率いる中国が、対日姿勢を硬化させている。中国渡航に必要なビザ(査証)だけでなく、第三国への乗り継ぎ時に中国に一時入国できる臨時ビザの発給手続きまで停止にしたのだ。新型コロナウイルス感染が急拡大する中国に対し、日本が水際対策を強化したことへの対抗措置と報じられるが、それだけなのか。中国事情に精通するキヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司氏は、岸田文雄政権が昨年12月、「台湾有事」も見据えて「安保関連3文書」を改定したこととの関係に注目する。こうしたなか、岸田首相は13日(日本時間14日未明)、米ワシントンでジョー・バイデン大統領と首脳会談を行う。
【地図でみる】沖縄周辺の主な陸自配備部隊
「日本国民に対する中国一般ビザの発行を一時停止します」
10日夜、在日本中国大使館はホームページで短い通知を掲載した。翌11日、中国外務省の汪文斌報道官は会見で、「関係する国が中国に対し、差別的な措置をとった状況に基づいて対等に反応した」と理由を説明。中国での新型コロナウイルス感染拡大を受けて、日本政府が中国からの入国者に対する検疫を強化したことに対する報復措置であることを指摘した。
だが、この中国側の措置には疑問を呈さざるを得ない。
中国政府が昨年末に突如、「ゼロコロナ政策」を事実上撤回したことで感染が急増しており、北京ではすでに市民の感染率が80%に達したとの専門家の分析があることは前回の拙稿で紹介した通りだ。さらに、中国政府が感染状況をしっかりと開示していないことが、国際社会の不安を招いている。
世界保健機関(WHO)は4日、中国が公表している新型コロナの感染状況について、実態が「過少報告されている」と指摘。欧州諸国をはじめ各国も相次いで、中国からの渡航者の水際対策の強化に乗り出している。
にもかかわらず、今回の中国政府によるビザ発行停止の措置は、日本と韓国だけだ。観光や出張などの15日以内の訪中のビザ免除措置もすでに停止されている。11日には、中国を経由して他国に向かう際に免除していた「トランジットビザ」についても一時停止を発表した。日本人の中国訪問を事実上封じる厳しい措置となる。
北京の日本大使館がツイッターの公式アカウントで、「日本は中国人の訪日ビザの発給を制限しておらず、中国側のやり方には完全に対等性に欠けている」と反論している。日本政府も中国人の来日ビザの制限を含めた報復措置を早急に検討すべきだろう。
こうした中国側の厳しい措置の背景には、「習近平指導部の対日外交の変化がある」と筆者はみている。
伏線はあった。
昨年12月末に予定されていた林芳正外相の訪中が突如、キャンセルとなった。日本政府関係者によると、「新型コロナの状況などを鑑み、年内の実施は難しくなった」と中国側から申し出があったという。
だが、「コロナを理由」としたキャンセルは口実に過ぎないだろう。
12月21日には、オーストラリアのペニー・ウォン外相が4年ぶりに訪中している。今年に入って1月4日には、フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領が就任後初めて中国を訪れているからだ。
では、中国側が対日強硬に傾いている真の理由は何か。
複数の中国政府関係者は「日本政府の台湾政策への不満」を挙げる。岸田政権は昨年12月16日、中国によるミサイル攻撃を想定した敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有などを盛り込んだ国家安全保障戦略など「安保関連3文書」を閣議決定した。同26日からは、自民党の世耕弘成参院幹事長らが台湾を訪れてもいる。
今後、台湾情勢が緊迫してくるに従って、中国政府による日本側への揺さぶりは強まるだろう。その都度、日本政府が右往左往してはならない。
「台湾有事」において日本にとっての譲れないラインは? 有事の際どのような役割を果たすのか? 日本の防衛にとって何が足りないのか? 自らの戦略を固めて対中抑止を高めていくことが今、日本に求められている。